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【注意喚起】LLMに個人情報を入力してはいけない理由と、企業がとるべき現実的な対策
✅ はじめに:ChatGPTやLLMに“なんとなく”情報を入れていませんか?
近年、ChatGPTやClaude、Geminiなどの大規模言語モデル(LLM)が日常業務に定着しつつあります。
質問に答えてくれたり、資料を作成してくれたりと便利な存在ですが──
「個人情報(PII)をうっかり入れてしまうと大変なことになる」ことをご存じですか?
本記事では以下の内容を、技術的+実務的視点から解説します。
- LLMに個人情報を入力してはいけない本当の理由
- モデルに情報が“記憶”される仕組みとそのリスク
- 実際に起きた情報漏えい事故の例
- PII保護のための現実的な対策と技術例(プライバシーサンドボックスなど)
🔍 そもそも「個人情報(PII)」とは?
PII(Personally Identifiable Information)とは、個人を特定できる情報全般を指します。
例として以下のような情報があります:
- 氏名、住所、電話番号、メールアドレス
- 社員ID、ユーザーID、顔写真、位置情報
- 病歴、学歴、業務上の行動ログなど
⚠️ これらをLLMにそのまま入力することは、企業リスクや法的リスクに直結します。
❌ なぜLLMに個人情報を入力してはいけないのか?
理由1:一部のLLMは入力内容を学習に利用する
- 一部のクラウド型LLMは、ユーザーの入力を後の学習に再利用している可能性があります。
- その結果、別ユーザーへの応答として情報が“出てしまう”リスクがあります。
✅ 例:OpenAIの無料版ChatGPTでは、デフォルトで入力が学習に使われます(設定で無効化可)。
理由2:モデル抽出攻撃(Model Extraction)で情報が盗まれる可能性
- 悪意あるユーザーが大量のクエリを通して、モデルに“染みついた知識”を逆抽出する「攻撃」が報告されています。
- PIIや機密情報がモデルに残っていた場合、それが“復元”されてしまう可能性があるのです。
理由3:法的責任は“利用者側”が負う場合がある
- 日本の個人情報保護法やEUのGDPRでは、第三者サービスにPIIを提供した場合、その取り扱いについて管理責任を問われる可能性があります。
⚠️ 実際に起きた「情報漏えい事故」の例
▪ Samsung(2023年)
社内でChatGPTを業務に使っていた開発者が、ソースコードと会議議事録をそのまま入力。
後に「社内情報が外部モデルに蓄積されていた」と発覚し、全社的な利用禁止に。
▪ Amazon・Apple・JPMorgan など
大手IT・金融・製造業では、従業員によるLLMの不適切利用を防ぐため、業務利用を制限または禁止している例も多数あります。
🛡️ PII保護のために企業がとるべき技術的対策
✅ 1. 入力段階での「自動検知・フィルタリング」
- ユーザーが入力する前に、PIIに該当する内容(氏名、電話番号など)を自動で検知・マスクするフィルターの導入。
- 正規表現やNER(名前付きエンティティ認識)を使った実装が可能。
✅ 2. LLMプロンプトへの「サニタイザー処理」
- 企業内のLLM APIを使う場合、入力をプロキシサーバで中継・除去処理。
- プロンプトに個人情報が含まれていれば、自動でマスキング・警告を行う。
🧩 プライバシーサンドボックス的アプローチとは?
「データは入力するが、モデルには残さない」ための仕組みが「プライバシーサンドボックス的アーキテクチャ」です。
✦ 代表的な実装例:
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| Retrieval-Augmented Generation(RAG) | 機密データはモデルの外に保存し、検索→一時利用→破棄する構成 |
| オンプレLLM + ローカルマスキング | 機密情報がモデルに届く前に完全に匿名化される環境設計 |
| セキュアチャット基盤(社内Copilot等) | ログ保持/出力制限/社内データサンドボックスの三重防御 |
✅ まとめ:LLM利用には「PII入力禁止」が新常識
- 個人情報の入力は、重大な法的・技術的リスクにつながります。
- モデルが賢くなっても、“入力の責任”はあなたにあるという事実は変わりません。
企業や個人が安心してAIを活用するためには、
💡 「モデルの賢さ」ではなく、「モデルの扱い方」こそが問われる時代です。
