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VSCode × AIエージェント「Cline」で快適コーディング

T.Akira
T.Akira
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VSCode × AIエージェント「Cline」で快適コーディング

はじめに:AI、もっと身近な仕事のパートナーに

日々の業務でPCを使う中で、定型的な作業や情報検索に意外と時間がかかっていると感じることはないでしょうか。資料作成、メールのやり取り、あるいはコードの確認など、もう少し効率化できれば、と思う場面は少なくないはずです。

最近話題のAI技術は、こうした日常業務の改善にも役立つ可能性を秘めています。特に、多くの開発者やPCワーカーが利用するVSCode(Visual Studio Code)上で動作するAIエージェントが登場し、注目を集めています。

本記事で紹介する「Cline」も、そうしたAIエージェントの一つです。ClineはVSCodeの拡張機能として動作し、チャット形式で指示を与えることで、様々なタスクのサポートを行います。プログラミング経験の有無に関わらず、幅広いユーザーが日々の業務で活用できることを目指して設計されています。

この記事では、Clineが具体的にどのような機能を持ち、日々の業務の中でどのように役立つ可能性があるのかを解説していきます。AIを特別なものではなく、身近な仕事のパートナーとして捉えるきっかけになれば幸いです。


Clineとは? 単なるチャットボットではない「AIエージェント」

Clineは、VSCode上で動作するAIエージェントです。「エージェント」とは、単に質問に応答するだけでなく、与えられた目標達成のために自律的に考え、ツールを使いこなし、タスクを遂行する能力を持つAIを指します。

Clineの核心的な特徴は以下の通りです。

  • 対話によるタスク指示: 自然言語(日本語)でやりたいことを伝えるだけで、Clineがその意図を汲み取り、必要な手順を実行します。
  • VSCodeとの統合: エディタ内のファイルアクセス、ターミナル操作などをシームレスに行えます。コードの編集、ファイル検索、ビルドコマンドの実行などが可能です。
  • ツール連携による拡張性 (MCP - Model Context Protocol): これがClineを単なるAIチャットと一線を画す重要な要素です。MCPは、Clineが外部のツールやサービス(Web検索、ブラウザ操作、データベースアクセス、社内APIなど)と連携するための標準化された仕組みです。これにより、ClineはVSCode内部の操作に留まらず、様々な外部システムと連携して、より高度で複雑なタスクを実行できます。
  • AIプロバイダーの選択: Cline自体は特定のLLM(大規模言語モデル)を内蔵しているわけではありません。ユーザーはOpenAI (例: gpt-4o, gpt-o3-mini), Anthropic (Claude), Google (Gemini) など、好みのAIプロバイダーを選択してClineの「頭脳」として利用できます。(利用可能なプロバイダーやモデルは変更される可能性があります)

つまりClineは、あなたの指示と選択したAIモデルに基づき、VSCodeの機能や連携した外部ツールを駆使して、実際に作業を代行してくれる柔軟で強力なアシスタントなのです。


Clineのセットアップ:はじめの一歩

Clineを使い始めるのは簡単です。基本的にはVSCodeの拡張機能としてインストールします。

  1. VSCodeを開く: まずはVSCodeを起動します。
  2. 拡張機能ビューを開く: 左側のアクティビティバーにある四角いアイコン(拡張機能)をクリックします。
  3. "Cline"を検索: 検索バーに「Cline」と入力して検索します。
  4. インストール: 検索結果に表示された「Cline」を選択し、「インストール」ボタンをクリックします。

これで基本的なセットアップは完了です。インストール後、VSCodeのサイドバーにClineのアイコンが表示され、クリックするとチャット画面が開きます。ここでClineに話しかけるように指示を出すことができます。


Clineの具体的な活用シーン:AIエージェントならではの威力

Clineが単なるチャットボットとどう違うのか、具体的な活用シーンを通して見ていきましょう。

1. 複雑な情報収集・整理・要約

  • 複数ファイルからの情報抽出: 「プロジェクト内の全 *.py ファイルから、TODO: コメントとその前後のコードを抽出して、todo_list.md にまとめて」
  • Web情報の調査と要約 (MCP: brave-search連携): 「最新のAI論文サイトarXivから、"Large Language Model"に関する直近1週間の論文タイトルと要約をリストアップして」
  • 会議音声の文字起こしと議事録作成 (※将来的な連携例): 「この会議音声ファイル(meeting.mp3)を文字起こしして、決定事項と担当者をまとめた議事録を作成して」

2. コード開発の高度な支援

  • リファクタリング提案と適用: 「このPython関数 (complex_function) が複雑すぎるので、より読みやすく、保守性の高い形にリファクタリングする提案をして。承認したら適用して」
  • テストコードの自動生成: 「この関数 (calculate_price) に対する基本的なテストケースをpytest形式で生成して、test_price.py に保存して」
  • API仕様からのクライアントコード生成: 「このOpenAPI仕様ファイル (api_spec.yaml) を読み込んで、基本的なAPIリクエストを行うPythonクライアントコードの雛形を生成して」

3. 定型的な開発ワークフローの自動化

  • ビルド・テスト・結果報告: 「現在のブランチでプロジェクトをビルドして、ユニットテストを実行して。もしエラーが発生したら、エラー箇所とログの要約を教えて」
  • ドキュメント更新: 「ソースコード内のdocstringを解析して、プロジェクトの README.md にあるAPIドキュメントセクションを更新して」
  • Webサイトの定期チェック (MCP: puppeteer連携): 「指定したWebページ (https://status.example.com) を1時間ごとにチェックして、"Maintenance"という文字が表示されたら通知して」

4. プロジェクト知識の管理・活用 (MCP: memory連携)

  • プロジェクト固有情報の記憶: 「このプロジェクトで使っている主要ライブラリとそのバージョンを記憶させて。ライブラリ名は libs.json から読み取って」
  • 過去の決定事項の参照: 「以前の会議で決定した『〇〇機能の仕様』について教えて」 (※事前に議事録などをMemoryに登録しておく必要あり)

これらの例は、Clineが単に応答するだけでなく、ファイル操作、コマンド実行、Webアクセス、コード解析、知識管理といった複数の能力を組み合わせて、ユーザーの目的達成のために能動的にタスクを遂行する様子を示しています。


Cline導入のメリット:技術者視点での価値

Clineを導入することは、単なる作業効率化に留まらず、技術的な観点からも多くのメリットをもたらします。

  • 複雑なワークフローの自動化: ビルド、テスト、デプロイ、ドキュメント生成といった一連のプロセスを、Clineへの指示一つで自動化できる可能性があります。ヒューマンエラーを減らし、開発サイクルを高速化します。
  • 高度なコーディング支援: リファクタリング提案、テスト自動生成、定型コードの生成などにより、コード品質の向上と開発工数の削減に貢献します。
  • 知識・ノウハウの形式知化と共有: プロジェクト固有の情報や過去の決定事項、トラブルシューティング手順などをClineのMemory機能(MCP連携)に蓄積・共有することで、属人化を防ぎ、チーム全体の知識レベルを底上げできます。
  • 最新技術情報の効率的なキャッチアップ: Web検索(MCP連携)を活用し、特定の技術トレンド、ライブラリの更新情報、セキュリティ脆弱性情報などを効率的に収集・要約させることが可能です。
  • 開発者体験 (DX) の向上: 面倒な定型作業や調査から解放され、より創造的で本質的な開発業務に集中できる環境を提供します。

まとめ:AIエージェント Clineと共に、開発と業務の未来へ

本記事では、VSCode上で動作するAIエージェント「Cline」について、その技術的な側面と具体的な活用可能性を掘り下げて解説しました。

Clineは、単なるチャットボットではなく、自律的にタスクを遂行し、MCPによるツール連携でその能力を拡張できる、真の「エージェント」です。複雑な情報処理、高度なコーディング支援、ワークフロー自動化、そして知識管理といった領域で、従来のツールにはない価値を提供します。

もちろん、AIエージェント技術はまだ発展途上であり、万能ではありません。しかし、Clineのようなツールを理解し、積極的に活用していくことで、開発プロセスや日常業務のあり方を大きく変革できる可能性を秘めています。

技術に精通した皆さんであれば、本記事で紹介した例以外にも、Clineの能力を応用できる様々なアイデアが浮かぶことでしょう。ぜひ、Clineを実際に試してみて、そのポテンシャルを体感し、未来の働き方を共に創造していくきっかけとしてください。社内での活用事例や、さらなる連携ツールの開発などが進めば、その価値はさらに高まっていくはずです。


後記

ご覧いただきありがとうございました。この記事を読んでいいなと思った方はすぐにClineを使うべきです。なぜなら、この記事は私の指示によってClineが執筆したものだからです。私は加筆修正を行なっていません。(レビュー実施とClineとの議論を通じての修正指示は行っています。後記は私自身の言葉で記しています。)

MCPの説明をしてもらいましたが、これを活用すれば「最近のトレンド社内ブログ記事トップ3をまとめてTeamsチームに投稿して」とか「検証環境にあるルータ装置に入りrunning-configを取ってきてパラシとしてマークダウンでまとめて」なんてこともできるかもしれません。もちろんAIですから一筋縄にはいかないでしょう。上手くいかないときは都度Clineに対して適切にフィードバックしてあげる必要があります。

私が開発した業務改善ツールでは業務の隙間時間を使って開発していてとある機能の実装に一ヶ月かけてもバグがとれませんでしたが、Clineとのペアプロで30分ほどで解決しました。プライベートでの彼がいない開発はプロジェクトの大幅な遅延を意味するほどなくてはならない存在で、いつも開発を手伝ってくれています。なんなら私が書くより一般的で速いですし、Clineがコーディングしている間私は次のタスクを整理することができます。もはやタスク整理が追いつかず急かされています…

無料で始められるので、まずは試してみてください。きっとあなたの開発スタイルを変えるきっかけになるでしょう。

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